戦の神とエテルマリアの少女

幕間

Work by ネオかぼちゃ

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薔薇の庭園

神議とは、天界12神が一同に会し、地上や自分の領域などについての方針の話し合いや問題の解決、時には裁判を行う神々の会議である。

しゃぼん玉の漂う美しい薔薇の庭園でフェリカは領域の主とお茶の席を共にしていた。
あの戦闘の後、デスラビスは神議にてフェリカの処遇について他神の判断を仰ぐため、議論が決着するまでフェリカを空間神パルラの元に預ける事にした。ロアとデスラビスの2柱に対して中立かつ、人間に対しても好意的な神である彼女なら問題ないだろう、と。

あの後ロアがどうなったのかはフェリカには分からない。
まるで何もなかったかのように綺麗になった自分のドレスを見つめる。

「花の港の小鳥よ、随分と浮かない顔をしているね。王子様の事が心配なのかい?」

暗い表情のフェリカにパルラが問いかける。王子様とはロアの事だろう。
12神の1柱、空間と大気の神パルラ。彼女の方こそまるで御伽噺の王子様の様にキラキラとしたオーラが溢れる女性だ。語り口調もどうやら絵本の王子様のようだ。

「はい・・・。」

戸惑いながらも小さく答える。

「あの子なら大丈夫さ。頑丈だし、医学の神もいるからね。」

パルラはそう言い優雅に紅茶を嗜む。
せっかく出された物だが、これまでに色々な事が起こりすぎたフェリカはそれに口をつける気にはならなかった。

「あの・・・よろしいでしょうか。」
「何かな?」
「私に、何があったんでしょうか。」

フェリカの問いにパルラは「そうだな・・・。」と、考える素振りを見せる。

「概ねボクが知っているのは、キミは地上で死に、ロアが死んだキミの魂を冥界から引き上げた。といった所かな。」

この神様の認識も、自分とそう変わらないのかもしれない。

「私・・・死んだ時のこと、何も覚えてなくて・・・。」
「ふむ、おそらく忘却の湖に浸かったのだろう。キミの記憶は削れているのかもしれない。紅茶に溶けていく角砂糖のようにね。・・・おや、キミともっとお喋りしたかったがそろそろ時間だ。」

そう言いパルラが立ち上がる。

「さぁ、こちらにおいで。」

パルラにエスコートされ訪れたのは、あの美しい港町だった。

「ここは、エテルマリア・・・。」
「そう、キミの為に用意した、キミの記憶の街だ。ここの方が馴染みがあって安心するだろう?」

誰もいない街中を軽やかに歩くパルラについていくと、あの神殿に辿り着いた。
神殿の礼拝堂は変わらず神話を語り、なぜかそれが随分懐かしく感じた。

「神議でキミの行く末が決まる。それまでここで待ちなさい。そう、王子様のお迎えをね。では、ボクは例の会議に向かう。キミにとって幸福な結末とならんことを。」

誰も居なくなった神殿でフェリカは一人、冥界で別れる時に言われた言葉を思い出す。

『必ず迎えに行く!』

きっと彼が迎えに来てくれる。そう信じて目を閉じた。

冷たく、誰もいない牢を1柱の神が訪れた。
引きずりそうなほどの大きな翼を背に生やし白衣を纏った白髪の男神、医神アガルテは牢の奥に繋がれた罪人に声をかける。

「全く、また牢に入れられるなんて。本当に困った子だよ。ロア。」
「・・・・・・。」

その言葉にそっぽを向くロア。
その身体は動けないように枷と鎖で自由を奪われ、かなり機嫌は悪そうだが攻撃の意思は無い。

「話は聞いているよ。一人の人間の為にここまでやるなんて・・・、きっとお前にとって大切な人なんだね。」
「・・・ああ。」

静かに答えるロアの表情を見て、アガルテはただただ穏やかに続ける。

「アルヴェリターレの件は聞いたよ。私の方で地上に薬を降ろしたからもう大丈夫。あの病は徐々に終息するだろう。」
「そうか・・・ははっ、そりゃあ良かった。ありがとうな、アガルテ。」
「この後すぐに神議だ。それまで治療がてら、話を聞かせておくれ。」

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